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くさねっこカレッジ「情報をおしゃれに発信」開催!!

10月6日(日)、草津川跡地公園de愛ひろば(区間5)にて、くさねっこカレッジが開催されました。3回目は、講師に坂本大祐さん、ゲストに西澤奈都美さんをお呼びし、場づくりのこと、そして、情報発信で大切にしていることについてお話していただきました。

前半は坂本さんより、ご自身が運営されている「オフィスキャンプ東吉野」の取り組みを通して地域で展開するプロジェクトにおける情報発信についてお話いただきました。
後半は、ゲストの西澤さんと坂本さんのスペシャル対談。草津川跡地公園の近くにあるシェアスペース「みんなのハナレ」の取り組みから、スペースを運営するにあたって大切にしていることなどを中心にお話を展開いただきました。

コンテンツ

  1. 講師・ゲスト紹介
  2. オフィスキャンプ東吉野の紹介
  3. 地域で展開する情報発信について
  4. みんなのハナレの取り組み
  5. スペシャル対談
  6. これからのくさねっこプログラム

くさねっこカレッジ」は、草津川跡地公園が完成する前、草津川跡地公園で活動する主体育成を目指して2014年に開催された市民講座です。そのときから参加しているメンバーが今もくさねっこを支えています。

今回、草津川跡地公園で新しい学びや出会いを広げるため、完成した公園で新たなくさねっこカレッジを開催することになりました。

これから、草津川跡地公園で新しい学びやつながりを増やしていきましょう!

1 講師・ゲスト紹介

坂本大祐さん/クリエイティブディレクター
人口1,700人の奈良県東吉野村に2006年に移住。2015年にシェアとコワーキングの施設「オフィスキャンプ東吉野」を企画。その後建築デザインを行い、運営も受託。開業後、道施設で出会った利用者仲間と山村のデザイン事務所「合同会社オフィスキャンプ」を設立。昨今は、奈良県だけでなく、日本全国のデザインや企画をひき受けている。また2018年、同じようなローカルエリアの子ワーキング運営者と共に「一般社団法人ローカルコワークアソシエーション」を設立、全国のローカルでコワーキング施設の開業をサポートしている。

ゲスト:西澤奈都美さん/草津まちづくり株式会社
シェアとコワーキングのスペース「みんなのハナレ」管理人

2 オフィスキャンプ東吉野の紹介

坂本さんが運営されている「オフィスキャンプ東吉野」は、人口1,700人の奈良県東吉野村のある、シェアとコワーキングのスペースです。

坂本さんは大阪でデザイナーとして活躍されていましたが、体調を崩されたことをきっかけにご両親と東吉野村に移住されました。

オフィスキャンプ東吉野の様子

オフィスキャンプを設立するにあたり、大事にしたことが2つあるそうです。

1つ目がターゲットをしぼる
シェアとコワーキングのスペースはみんなで働いて良い場所。ただ場所があるだけでは人は来ないため、まずはオフィスキャンプ東吉野にどうすれば人が来てもらえるか、そして来た人にどう使ってもらえるかを考えたそうです。
坂本さんも移住してもデザイン業を続けることができたことから、働く場所を選ばないクリエイターをターゲットにしようと考えました。

2つ目はターゲットにふさわしいハード(内装)の整理
ターゲットとして絞ったクリエイターに「ここだったら働いてみたい、行ってみたい」と思ってもらえる空間を設計。コワーキングスペースの顔ともいえるワークスペースには、東吉野の檜からとれた一枚板の机とイギリスのデザイナーのオフィスチェアを設置。空間としてのインパクトが話題となり、足を運んでもらうきっかけとなりました。
そして、コワーキングスペースという、当時あまり馴染みがなかった空間を使ってもらうためのしかけとして、小さなコーヒースタンドを併設。ただコーヒーを飲みに来る人のように、働く以外の目的でも来てもらえる工夫があります。
オフィスキャンプ東吉野の最大のミッションは、訪れた人がオフィスキャンプを通じて東吉野村に移住・定住すること。開業して5年、プロダクトデザイナーや家具職人など、徐々に移住者が増えてきているそうです。

使って欲しいターゲットを決め、そのターゲットから見たらどのように見えるかを意識してデザインに落としこんでいくこと。この後の情報発信のお話にもつながることですが、相手からどのように見えるかを考えながら企画を練っていくことが大切です。

3 地域で展開する情報発信について

オフィスキャンプ東吉野での情報発信は、特別なことはしていないそうです。
発信ツールはSNS(Facebook、インスタグラム)とWEBサイトがあります。

情報は発信するから発信されるへ

昔は情報を発信するためにプロフェッショナルな技術が求められていましたが、今は誰でも情報を発信できる時代。特に10代、20代の若い世代は、テレビを見る時間より動画共有サイトを見る時間、SNSをする時間が圧倒的に多いそうです。そして、情報を一方的に得るだけではなく、自分からも日常的に情報を発信しています。

だからこそイベントなどをアピールするときに、自分たちが情報発信をするだけではなく、「どうすれば情報発信してもらえるか」を考えていく必要があります。

今の情報発信において大事なこと

1つは企画力
まだ見たことがないもの、その場所においてありえないもの・ことを考えること。
周りから勝手に発信されるような企画と、そうではない企画では、発信のされかたが大きく変わってきます。

オフィスキャンプ東吉野で例えると、人口1,700人の村にあるコワーキングスペース。
普通は働く人の多い都市部にコワーキングスペースはありますが、人口の少ない中山間地域の村にあるという「その場所にありえないようなもの」、一見なさそうなところにあるから自分たちで発信しなくても発信される状況がつくりだされているのです。

もう1つは見せ方
撮られていることを意識すること、自分でも撮ってみること、ギャップをつくること。
自分で撮影してみることで、どんなもの・ことであれば撮影してみたいと思うのか、発信する側を想定して見せ方を考えてみることが大切です。
また、その場にあると驚くような「ギャップ」も、情報発信される見せ方には大切です。

オフィスキャンプ東吉野では、コワーキングスペースにある檜の一枚板の机とデザインチェアが「映え」スポットになっています。

そして、情報発信において一番大切なこと。それは、「自分たちが一番楽しんでいること」。
楽しそうにしていることは、その場にいなくても伝わるもの。自分たちが楽しそうにしていることが1番の情報発信のエネルギーになるそうです。

坂本さんは体調不良のため、急遽オンラインでレクチャーいただきました

情報を発信することは難しいと思われがちですが、まず自分たちが楽しみながら発信してみることで、周りから発信したくなるような状況が生まれるかもしれません。

4 みんなのハナレのとりくみ

続いて、西澤さんより「みんなのハナレ」のとりくみについてお話いただきました。

本陣エリアとまちづくり

西澤さんは今まで、空き家・空き店舗等のリノベーションや草津川跡地公園のテナント事業(商業店舗の建設)などの整備事業をされてきました。ハード(建物)が完成し、これからどんなまちづくりを進めていくかを考えたとき、ハードをつくってソフト(人)をつくるのではなく、ソフトがあって、それを受け入れるハードがあるのではないかと考えられました。

まちづくりの視察や勉強をしていくなかで参加したイベントでお話されていたBLUE STUDIO 大島芳彦さんのことばが印象に残ったそうです。

「付加価値」は不要。価値はすでにそこにある。潜在価値を見いだせ。

まちに付加価値をつけるのではなく、すでにあるまちの魅力を発掘することが大切だと感じたそうです。草津駅前は都会的で便利といったイメージがありますが、草津川跡地公園から立木神社までの「本陣エリア」は、草津駅前のエリアとはまた違う街の顔があります。徒歩圏内でまちのいろんな顔があることが強みだと思い、その強みを発信したいと思われたそうです。

そして、もうひとつ印象的なことばがあるそうです。

日常に眠る地域の資源を顕在化し、編集する。

この言葉から、人、空間、文化・歴史などの地域資源を見つけ出し、うまく編集することが大切だと思ったそうです。そこで、本陣エリアの地域資源を見つけるため、デザイナーにまちの写真を撮ってもらい、お寺の屋根を見上げるとウサギがいる写真など、日常にある風景を切り取った写真から、知らなかった草津の一面を再発見していったのです。

草津小市について

草津にはかつて年に2回、「草津大市」という市が開かれていたそうです。その草津大市をモチーフにできないかとはじめたのが「草津小市」でした。
草津小市のインスタグラムで、デザイナーに撮ってもらった本陣エリアの日常風景の写真をアップしたところ、たくさんの人に反応いただいたそうです。草津のまちの知らなかった風景を知っていたくきっかけになったのではないでしょうか。

草津小市は、最初はお寺1ヶ所での開催でしたが、徐々にエリアが広がっていき、昨年はくさつファーマーズマーケットとコラボされました。社会福祉協議会の出店や、地域とお店のコラボ企画など、今では西澤さんがすべてを企画せずとも、参加主体それぞれが草津小市を楽しんで参画してもらっているそうです。

実際にやってみるまでは草津小市でやりたい雰囲気を表すことが難しかったそうですが、やっているところを見てもらうことで雰囲気を伝えることに成功されました。言葉で伝わらないこともまずアクションをおこして見てもらうことが大切だそうです。

みんなのハナレ

草津小市で年に一度の開催でその時にしか集まれないのはもったいないと「草津小市を日常に」を掲げ、「かかわりしろ」、余白をつくることをテーマにはじめたのが「みんなのハナレ」でした。立ち上げには、坂本さんもサポートされました。

みんなのハナレでは番頭さんと呼ぶ仲間と一緒に運営するしくみがつくられています。もともとは草津まちづくり株式会社が倉庫として使っていた場所を自分たちで改装。置いてある家具は、昔ながらの家具などがあれば譲って欲しいと地域に発信して集めたものです。

みんなのハナレはいろんな人が混ざり合う場となっています。地域の人にも立ち寄ってもらえるように毎週新鮮なお野菜を販売し、お買い物の場となっています。ハナレでは、みんなでシェアしながら、それぞれがやりたかったことのお手伝いもしています。初めて個展をするなど、何かやってみたい人からのお問い合わせが多いそうで、無理せず夢をかなえることができる場所となっているそうです。
これまでは、番頭さんが企画した「フォントの会」や、作家さんの展示、身体に優しいご飯を提供する「ハナレのごはんや」などが開催されています。

関係性のデザイン

最初は輪の中の様子を楽しそうにみている人が、イベントなどに参加してみることによって少しずつ話の中に入っていく。そして、その人がイベントに参加してみたら「自分もできそうだ」とイベントを企画する。そうやって段階的に関わっていけるしくみができています。

最近は本陣エリアに店舗をだしたいという人が少しずつ増えているそうです。例えば、2019年には草津川跡地公園のふもとにベーカリーショップが、2020年の8月には焼き菓子のお店がオープンしました。

みんなのハナレは、公園から歩いて約5分。西岡写真館さんの隣にあります。

草津川跡地公園でも人がゆるやかに関わっていけるようなしくみを考えていくことで、くさねっこにゆるく関わってみたい人が広がっていくのかもしれません。

5 スペシャル対談

対談メンバー:坂本さん(写真中)・西澤さん(写真左) 進行:studio-L林(写真右)
日常の暮らしを豊かにすること

林「番頭制度は草津小市から生まれた取り組みだと思いますが、日常的な活動を増やしていくことを大事にしようと思ったきっかけや、大事だと思っている理由はありますか?」

西澤さん(以下、西)「まちづくりの会社なので、にぎわいをつくることをよく行政の方と話すのですが、人を集めることを目的にしてしまうと疲弊すると感じています。マルシェをやって人がどれだけ来たか、売上がどうだったかを最初は目的にしてたのですが、やるにつれて前回の売上を超えていかないと考えたとき、この状態では継続しないなと思いました。マルシェのような非日常的なことを頑張るよりも、1年間365日ある日常をいかに豊かにするかを考えるほうが、より楽しい生活になると思いました。日常をどう実りあるものにするかがとても大切なことだと思います」

林「草津川跡地公園は公園なので、日常的に使う場所としてどう使えるかがテーマになると思っています。イベントを行うことに注力するよりも、日常の暮らし自体を豊かにするために注力することが大切ですね」

みんなのハナレは《半開きの場》

林「みんなのハナレは誰でも立ち寄れるスペースだと思うのですが、そこまで開いた場所ではないそうで、完全に開き切るのではなく《開いた場と閉じた場》のバランスが面白いと思いました。そのバランスも注目される《企画力》のひとつかなと思うのですが、なぜ開ききらない場をつくろうと思ったのですか?」

西「みんなのハナレがオープンしたときは、私が頑張りすぎることで居心地の良さがなくなることもあり、《あまり頑張りすぎなくてもいいのかな、焦らなくても良いのかな》と思うようになりました。
番頭さんをはじめ、ハナレのルールやコンセプトをわかってくれている人が友だちを呼んでくる、そしてその友だちがまた違う人を連れてくる。つながりの積み重ねで今のハナレができていると思います」

番頭さん主催で開催された「フォントの会」の様子

坂「コミュニティは《エリア型》と《テーマ型》の2種類に分かれると言われています。例えば草津という街に住んでいると、《草津》というコミュニティに属することになります。つまり住む=《エリア型》のコミュニティに属すると言えると思います。《エリア型》に帰属するコミュニティは大きく広く開いているので、オフィスキャンプやみんなのハナレのような《テーマ型》のコミュニティはそこまでオープンにする必要がないのかなと思っています。ですが、共通の好みを持った人が集まってできた《テーマ型》のコミュニティがたくさんあるほど街は豊かになると思います。他の場所にハナレとは違ったタイプの人が集まる場ができても良いと思いますね。《テーマ型》のコミュニティは、場が開きすぎているとすぐ壊れてしまうデリケートなものだと思うので、ハナレが西澤さんを含め、草津まちづくり株式会社のみなさんが《こういう人に来てほしい》と思う人が集まる場所でいいと思います」

林「ありがとうございます。番頭さんたちがハナレでやりたいことを実現させるかわりに、運営もしていることが特徴的だと思います。役割をシェアしたうえでやりたいことをやる。そのバランスが取れているところが良いと思いました」

《発信される》ためには、まず自分たちが楽しむこと

林「坂本さんのお話でもあったように、《情報を発信される》ことがこれからの情報発信でとても大事で、情報発信される媒体をつくり、自分たちで情報発信するからこそ発信してくださる方が増えていくと思います。しかし、そもそも楽しそうに見ていてくれる方がいないと《発信される》ことにつながらない。これから情報発信を充実させていくときに、楽しそうに見てくれているファンを増やすことが大切なポイントなのでしょうか」

西「ハナレは路地裏の人通りがない場所にあるので、イベントをやっていても通りすがりで見る人は少ないです。そのため、やっていることがきちんと伝わるようにSNSなどできちんと発信する必要があると思っています。対して草津川跡地公園は屋外の公共空間なので、通りすがりの人が様子を見ていたり、通りすがりの人が入ってこられたりするので、見られていることを意識しながら活動することは大切なことだと思います。通りすがりに見ている人がたくさんいらっしゃることが、草津川跡地公園の強みだなと思いました」

坂「発信される状態というのは、自分が発信している状態を見るとわかりやすいと思います。例えば、インスタグラムにどんな写真を撮って投稿しているのか、Facebookにどんなネタを投稿しているのか。自分も発信者の一人なので、思わず発信したもの・ことにどんな魅力があったのかを見ていくと、そこに答えがあると思います。ただ、先ほど西澤さんもおっしゃられていましたが、結局活動している人が楽しむことに勝るものはないと思います。今の時代、楽しそうかそうでないかはテキストや写真で伝わってしまいます。我々は情報をカッコよく伝えていくことでお金をもらうお仕事ではあるんですが、過度にやりすぎて中身とかけ離れてしまうと逆効果です。コストをかけて発信したにもかかわらず、思ったよりもカッコよくない、思ったよりおしゃれではないといったマイナスイメージになってしまうこともよくあります。等身大で良いと思うものを、良いと思った人が伝えていくこと以上に大切なことはないと思います」

林「楽しそうなことが伝わることが一番大事で、それを伝えるためには当人たちが楽しまないといけないですね。ポイントは、いろんなことを分かちあえる仲間や、一緒にやりたいなと思う人と一緒に活動することですね」

西「自分がピンときたもの、心が震えたものを発信すると、共感してくれる人が反応してくれると思います。おしゃれにしようと思わず、自分が心震えたものを自分の記録として発信し積み重ねていくと、その人の好きなものが見えてきます。私は気に入ってる空間や大切な瞬間を発信しています」

まとめ

坂「今日は《情報発信》というテーマで集まっていただいたわけですが、テクニックみたいなことはほぼお伝えしていないと思います。テクニックより重要なことが《根っこ》の部分です。自然体で共感される仲間を広げていくことが《かっこいい》《おしゃれ》なのではないでしょうか。今はやりたいこと、面白いと思ったことをやるためのツールやサービスが充実している時代です。みなさんがそれぞれやりたかったことや面白いと思ったことをやって発信していくことが一番の情報発信になると思います」

林「やりたいことを楽しそうにやることはもちろんですが、周りから見ても楽しそうで応援したくなるように見せる視点も忘れずに活動していくことが大切です。坂本さん、西澤さん、今日はどうもありがとうございました!」

6 これからのくさねっこプログラム

みんなのハナレでは8月から少しずつイベントが再開され、草津川跡地公園でも9月から「くさねっこプログラム」が動き出しました。

9月のくさねっこDAYでは「くさねっこD.I.Y.」を実施しました。また、今年2月からできていなかった「くさねっこカフェ」が約7ヶ月ぶりに復活!
そして、11月21日(土)にはKUSANEKKO POP UP EXHIBITION -くさねっこお披露目会-を実施。少しずつですが、活動できる範囲を模索しながら動き出しています。

くさねっこカレッジはこの「情報をおしゃれに発信」で一旦終了となりますが、また定期的にやってほしいとの声が多くあがっていますので、また開催したいと思っています!